ウェットフォールディング(湿式折り)入門:曲線美を生み出すプロの技法

折り紙作品を見て、「これは本当に紙でできているの?」と驚いたことはありませんか? まるで粘土や木彫りのように滑らかな曲線、生き生きとした動物の筋肉の隆起、ふわりとした布の表現。 これらの表現を可能にする魔法のような技法、それが 「ウェットフォールディング(湿式折り)」 です。
今回は、折り紙の巨匠・吉澤章氏によって考案され、現代の創作折り紙において不可欠なテクニックとなったこの技法について解説します。
ウェットフォールディングとは?
通常、紙は乾いた状態で折りますが、ウェットフォールディングでは 「紙を水で湿らせながら」 折ります。
なぜ濡らすのか?
紙の繊維は、水を含むと柔らかくなり、乾くとその形で固まるという性質(水素結合)を持っています。 この性質を利用することで、以下のようなメリットが生まれます。
- 曲線が作れる: パキッとした直線だけでなく、緩やかなカーブを固定できます。
- 形状保持力が上がる: 乾くとカチカチに固まるため、糊を使わなくても立体的なポーズを維持できます。
- 厚手の紙が折れる: そのままでは硬くて折りにくい厚手の紙(水彩紙など)も、湿らせることで加工しやすくなります。
必要な道具
特別な道具は必要ありません。
- 厚手の紙: 薄い紙は水に弱く破れやすいため、タント紙、画用紙、水彩紙(ファブリアーノ、アルシュなど)が適しています。
- 水: 小皿に入れた水、または霧吹き。
- 布・スポンジ: 紙を湿らせるために使います。
- マスキングテープ: 乾燥するまで形を固定するために使うことがあります。
実践!ウェットフォールディングの手順
1. 紙を湿らせる
霧吹きで全体に軽く水をかけるか、水を含ませて固く絞った布で紙の表面を拭くようにして湿らせます。 ポイントは「濡らしすぎない」こと。 紙がベチャベチャになると破れてしまいます。「しっとりとして、冷たく感じる」程度がベストです。
2. 基本の形を折る
ある程度の工程までは、通常の折り紙と同じように折っていきます。 紙が乾いてきたら、その都度少しずつ湿らせ直します。 逆に、濡れすぎて柔らかくなりすぎた場合は、少し乾かしてから作業を進めます。
3. 造形(モデリング)
ここがウェットフォールディングの真骨頂です。 作品が完成形に近づいたら、指先を使って紙を「曲げる」「膨らませる」「捻る」といった操作を加えます。
- 背中の丸み: 親指で押し出すようにしてカーブを作ります。
- 顔の表情: 目の周りを凹ませたり、鼻先を尖らせたりして表情を作ります。
- 手足の動き: 関節部分を少し曲げて、動きのあるポーズをつけます。
4. 乾燥・固定
形が決まったら、そのまま触らずに完全に乾かします。 ポーズが崩れそうな場合は、マスキングテープや洗濯バサミ(跡がつかないように当て布をする)で固定したり、ドライヤーの冷風を当てて乾燥を早めたりします。 完全に乾くと、紙は驚くほど硬く丈夫になり、その形を半永久的に保ちます。
成功のためのコツ
- 糊(サイジング)の効いた紙を選ぶ: 水彩紙など、製造段階で「にじみ止め(サイジング)」加工が施された紙は、水に強くウェットフォールディングに最適です。
- 一気に完成させようとしない: 湿った紙は摩擦が大きく、無理に引っ張ると表面が毛羽立ったり破れたりします。優しく、紙の様子を見ながら扱いましょう。
まとめ
ウェットフォールディングは、折り紙を「幾何学的なパズル」から「表現力豊かなアート」へと変える鍵です。 最初は水加減が難しく感じるかもしれませんが、慣れてくると紙が自分の手の中で自由自在に形を変える感覚に病みつきになるはずです。
ぜひ、厚手の紙を用意して、あなたの作品に「命」を吹き込んでみてください。
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orimemo編集部
折り紙の楽しさを世界に広めるために活動中。最新のトレンドやテクニックを発信しています。



