折り紙と数学の意外な関係:幾何学が解き明かす「折る」ことの科学

「折り紙」と「数学」。 一見すると、子供の遊びと難しい学問という、正反対のものに思えるかもしれません。 しかし実は、この二つは切っても切れない深い関係にあります。
近年、数学者たちの間で「折り紙幾何学(Origami Geometry)」や「計算折り紙(Computational Origami)」といった研究分野が急速に発展しています。 今回は、文系の方でも楽しめる、折り紙に秘められた数学の不思議についてお話しします。
定規とコンパスを超えた?折り紙の作図能力
中学校の数学で「作図」を習ったことを覚えているでしょうか? 定規(直線を引く)とコンパス(円を描く)だけを使って、様々な図形を描く問題です。
それが 「任意の角の三等分」 です。 (90度など特定の角度は三等分できますが、どんな角度でも三等分する方法は、定規とコンパスだけでは存在しません)
しかし驚くべきことに、折り紙を使えば、この「角の三等分」が簡単にできてしまうのです。 これは「阿部恒(あべひさし)の定理」などによって数学的に証明されています。 折り紙は、実は定規とコンパスよりも強力な計算能力を持ったツールなのです。
平坦折り(Flat Foldability)の条件
適当に紙に折り目をつけて、それをペタンと平らに折り畳むことはできるでしょうか? 実は、折り目が一点に集まる場合、それが平らに畳めるためにはある法則を満たしている必要があります。
「前川の定理」 一点に集まる山折りの線の数と、谷折りの線の数の差は、常に2である。 (例:山折り3・谷折り1、または山折り1・谷折り3)
「川崎の定理」 一点に集まる折り線の隣り合う角度を一つ飛ばしに足していくと、その和は180度になる。
これらの定理を知っていると、展開図を見ただけで「あ、この部分は物理的に畳めないな」と判断したり、新しい作品を設計する際のガイドラインにしたりすることができます。
ミウラ折り:宇宙へ飛び立つ折り紙
数学的な折り紙研究の実用例として最も有名なのが 「ミウラ折り」 です。 東京大学名誉教授の三浦公亮氏が考案したこの折り方は、地図の畳み方として知られています。
- 特徴: 対角線の部分を持って引っ張るだけで、一瞬で全体が展開し、逆に押せば一瞬で畳める。
- 応用: この構造は、人工衛星の太陽光パネル(ソーラーアレイ)の展開方式として採用されました。
ロケットの限られたスペースに巨大なパネルを収納し、宇宙空間で故障なく確実に広げる。 その極限のミッションを支えたのは、日本の折り紙の知恵だったのです。
展開図はプログラミング?
現代の複雑な創作折り紙(コンプレックス折り紙)の多くは、数学的な理論に基づいて設計されています。 「円領域法(サークルパッキング)」や「ツリー理論」といったアルゴリズムを使い、作りたい対象(例えば昆虫の足の数や長さ)に合わせて、紙の上にどのように領域を配置すればよいかを計算します。
今や折り紙作家は、紙を折る前に、パソコンのソフトを使って展開図を「計算」し「設計」する時代なのです。 それはまるで、プログラミングコードを書く作業に似ています。
まとめ
一枚の紙の中に潜む、厳密な論理と法則。 折り紙を折るということは、知らず知らずのうちに高度な幾何学パズルを解いているのと同じことなのかもしれません。
次に折り紙を折るときは、折り目の交点や角度に注目してみてください。 そこには、美しく調和のとれた数学の世界が広がっているはずです。
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orimemo編集部
折り紙の楽しさを世界に広めるために活動中。最新のトレンドやテクニックを発信しています。



